「夜にとける」

 

 

眠れない。
眠れない。
 
とろとろにとけて
眠りたいのに
まだ
固形の私が
残ってる。
 
とけて
とけて
強がりも
緊張も
とけて
とけて
小さくなって
固形の私がいなくなったら

 

夢の中へ行けるんだ。
 
 
 

 

 

「朝」
 
 
太陽がのぼり
ふとんという名の
たまごから
私は今日も
生まれてくることができました
 
生まれたての私は
生まれたてのあなたに
おはよう  をいいます
 
嬉しいね     朝

 

おめでたいね    朝
 
 
 

 

 

「お墓まいり」
 
 
宇宙の隅っこに
私だけの
お墓がある。
 
食べきれずに
捨てた食べもの、
思いがけず口からとび出した
トゲトゲの言葉、
後味の悪い
お別れ…。
 
私だけの
小さなお墓には
たくさんの
ごめんなさい  が
眠っている。
 
私はひとり
お墓まいりに行く。
 
ごめんなさい。
 
ありがとう。
 

 

ありがとうございました。
 
 
 

 

 

「味」
 
 
今日の私には
昨日のあなたのやさしさが
大さじ1だけ
混ざってる
 
こころと
こころは
混ざりあう
 
そのたびに
甘くなったり
苦くなったり
しょっぱくなったりする
 
生きて
生きて
私はさいごに

 

どんな味になっているのかな
 
 
 

 

 

「死」
 
 
地球は
いいところだったね。
 
おいしかったね。
 
きれいだったね。
 
きもちよかったね。
 
楽しかったね。
 
人は
やさしかったね。
 
 
そんな
無邪気なおわりを

 

夢みています。
 
 
 

 

 

「じゅんび」
  
 
あの人に会う前に
自分を
やさしいきもちで 
いっぱいにしておくんだ
 
どこを
つつかれても
やさしさしか

 

こぼれないように
 
 
 

 

 

「ひまわり暮らし」
  
 
あの人は
ベランダのひまわり達と
うれしそうに暮らしてる
 
あの人は
ひまわりが
よく似合う
 
あの人は
人間よりも
ひまわりと
気が合うのかもしれない
 
ひまわり達が
いつまでも
あの人と
一緒に
暮らしてくれたらいいのに
 
白雪姫と7人のこびとのように
にぎやかで
楽しい日々を
あの人が

 

ひまわり達と過ごせたら
 
 
 

 

 

 
「蟻」
 
 
手の甲で
何かが動いてる。
よく見ると
一匹の小さな蟻。
 
いつのまに
ここまで
のぼってきたの?
 
いつのまに
私に
くっついたの?
 
あなたは
私と似ているね。
 
私もね
大好きなあの人に
そっとくっついて
あの人を冒険しているところなの。
 
もぐったり
のぼったり
まよいこんだりしながら。
 
それでもまだ
あの人の
ほんの一部しか
わからないんだ。
 
人間って
大きいよね。
 
 
 

 

 
 
「手」
 
 
大きな風が
大きな波が
あっというまに
私とあなたを引き離す
 
そんな星で
小さな命どうしが 
小さな手をつないで
くっついている
 
大きな風が
大きな波が
あっというまに
私とあなたを引き離す
 
そんな星で
生きているんだもの
 
余裕なんか   ない
 
あなたを傷つける余裕なんか
ほんの少しも   ないんだ
 
愛することで
精いっぱい
 
この手が温かいうちに